興味を持って就職したものの実際に働いてみるとこんなはずじゃなかった。私にはこの仕事は向いていない!と働き出してから気付きく。こういったケースで後悔したくないですよね。
大企業で働く電気保全担当者はともかく、中小企業の電気保全担当者にとって電気保全という仕事は業務の一部であって、他にもいろいろな業務を行っています。
私は中小企業で20年以上、電気保全の担当をしてきました。そんな私だからこそ、皆さんの疑問に答えることができると思います。
この記事では電気保全の働き方に興味がある方に向けて、実際に私が担当している仕事内容を解説し、電気保全担当者の1日のスケジュールも公開します。
この記事を読めば、中小企業で働く電気保全担当者の仕事内容が把握でき、あなたが電気保全として就職したときに実際の業務内容とのギャップが減り、納得して働けるようになれるでしょう。
これまで20年以上、電気保全担当者として働いてきた私が経験を踏まえて仕事内容を解説していきます。
私が実際に担当している電気保全の仕事内容

私は20年以上、今の職場で電気保全の担当者として携わっていますが、仕事内容は、多岐にわたります。今の職場は、人員が少ないので、電気だけでなく機械保全も携わっています。また、製造にかかわるの運転業務も行っています。
まるで工場の何でも屋さんのようですが、その分、幅広い知識とスキルが身につきました。
ここでは電気保全の仕事に加え、私が日常担当している仕事内容についても紹介していきます。
製造オペレーター
製造オペレータ-とは、製品を製造するにあたってプラントなどの自動化された設備を操作して稼働させたり、製造工程を監視・調整する仕事になります。
私が働いている工場では製品を製造するため、毎朝設備を稼働させ、夕方に設備を停止し製造を終了させています。
主な業務内容は以下の通り
製造オペレーターの仕事だけでも多岐にわたります。もちろん、作業員数名で持ち場や担当を決めて業務を分担して行います。
日常点検
日常点検は保守の基本です。ここで過去の状態と比較しながら異常を発見し、設備の機能の維持や事故を未然に防ぐために行います。
点検内容としては、工場内を巡回し、運転状態にある機器を点検者の視覚(目視)、聴覚(異音)、臭覚(におい)、触覚(温度や振動)などの五感を使って点検したり、機器設備に備え付けてある諸計器などで、異常の有無を監視します。また適宜、軽い清掃や手入れを行います。
近年、IoTの導入やセンサーなどの精度も上がり、異常の早期発見や検出能力も飛躍的に上がりました。しかし、現場を巡回するから発見できる異常も多くあるので、できるだけ現場に出ての記録や点検を心がけましょう。
具体的な内容は以下の通り
私の場合、日常点検は毎日行いますが、上記に挙げた内容を全てするには範囲が広すぎるので、その日の範囲を決めて点検を行っています。
また、必要に応じて携帯用測定機器を使い、異常の確認をすることも大切です。
機械設備に関しては機械保全担当がいるので、そちらにお任せしていますが、点検中、機械設備の異常があれば、もちろん対応・報告を行います。
月次点検
月次点検はその名の通り、1ヵ月ごとに行う点検です。ここでは受変電設備を中心に点検を行います。
具体的な内容は以下の通り
上記のような点検項目をあらかじめ決めておき、点検内容を記録・管理していきます。ここで発見した異常や課題は緊急度と重要度に分類し、優先順位を付けて対応します。
定期保全(年次業務)
定期点検は会社ごとのに決めた保安規程に基づいて年に1回、停電して行う点検になります。
保安規程とは工場やビルにある電気設備を安全に使うための「会社のルールブック」のようなものです。
感電や火災などの事故が起きないように、誰が、いつ、どのように点検や修理をするのか、どんな時にどんな連絡をするのか、といった大切なことが細かく書かれています。保安規程は一定以上の電気設備を使う場所に必要で、経済産業大臣への届出が義務付けられている、とても重要な決まりごとです。
参考:電気事業法に基づく保安規程、電気主任技術者の届出等について
主な作業項目は以下の通り
他にも導体接続部の締め付け状態の確認や加熱の痕跡がないか確認をします。また、がいしなどに亀裂や異常がないかの外観点検も行います。
※ここでは作業方法や詳細については割愛しますが、停電作業についてもいずれ詳しく説明できる記事を作ろうと思っています。
トラブル対応、原因調査
モータの温度が上昇した、機械が突然停止してしまったなど、異常が発生すると対応が必要になります。異常の発見は点検中のときもあれば、呼び出しもあったり、警報装置が作動して気づくこともあります。
異常が発生してしますと、製造時間のロスや人件費のロス、設備費の損失が発生して大変です。
生産ラインが停止してしまったときの損失は大きく、停止時間に比例して損失も大きくなるため、迅速な対応が求められます。
この時のプレッシャーは半端ないです。
ここではトラブル対応の一般的なフローを紹介します。
- STEP1トラブルの認知
現地で現状の把握をします。破損個所や故障個所の確認、停止状態や生産ラインへの影響などの情報を収集します。
- STEP2関係各所への報告
現状や問題点の情報を共有して、各自がマニュアルに沿った対応をします。
- STEP3原因調査
原因の究明に努め、問題の処置方法や復旧見込み時間を調査します。
- STEP4トラブルを取り除く復旧作業
部品の交換や修理をします。基本的に原因の究明、完全な復旧を目指しますが、場合によっては一時的な処置を行い、運転再開を優先することもあります。
- STEP5運転再開
修理が終わったら、設備が問題なく動くか、そして安全な状態に戻っているかをしっかり確認します。問題なければ運転を再開します。
- STEP6再発防止策の検討・実施
同じトラブルが二度と起きないように、原因を分析し、対策を考えます。マニュアルや点検方法を見直し、劣化の異常兆候を見つけて故障の未然防止に努めます。
トラブルの解消をした後の再発防止策も重要ですが、復旧作業で使った消耗品などの補充や在庫管理も大切になります。
※トラブル対応についてもいずれ、詳しく記事にしようと思っていますのでお楽しみに!
生産計画
製品の生産計画を考えます。ある程度の生産量は年間計画で決めますが、私が担当している製品はその時に状況によって変わるため、週間予定を考え、周知し承諾を得て生産計画を実施しています。
データ入力、傾向把握、分析、調査
日常点検、月例点検や定期点検などで確認した項目のデータ入力をします。
その後、前回のデータとの比較や機器ごとの傾向を把握・分析して設備の診断を行います。そこで異常や違和感などがあれば、再調査や周囲へ相談し、その後の対応の判断をします。
報告書の作成
点検報告書や改善提案書、保全計画書などを作成します。
書類作成は意外に多く、業務の大半の時間を使うこともありますが、業務の効率化や生産性の向上、様々な人と関わるためには正確な情報の共有は必要です。
器具、部品、資材などを準備(選定、在庫管理)
基本的には在庫管理ですが、以下のようなことをします。
工場内には何十年も使っている設備もあり、設備本体もですが、その周辺機器なども劣化が進みます。それに対応すべく、部品ごとの交換したり、修理を行いますが、古い機械や部品はだいたい生産終了しています。その場合、代替機器の製品で対応したり、ユニットごと取り換える機器もあるため、選定が必要になることも多々あります。
それがけっこう大変だったりします。
部品交換、設備更新の提案
定期的な交換が求められる部品もあれば、点検で異常や劣化が認められたものについては、計画に基づき部品の交換や設備の刷新を提案します。
自分で対応可能な部品の交換は、設備が停止している時間を利用して実施します。当然ながら、夜間や休日の設備が停止しているときに作業を行うこともあります。
人員が限られているため、保全担当としては避けられない宿命と言えるでしょう。
私自身、部品の取り換えや修理、回路の改良といった実務作業は好きなほうなので、意外と苦になりません。むしろ、楽しいと感じる部分もあります。
工事計画、立案、準備
工事には設備更新もあれば新規設備の導入や設備ラインの改造などいろいろありますが、必要に応じて工事の計画を立てていきます。
計画がまとまれば、その内容を具体的に落とし込んだ立案書を作成し、社内の関係部署からの承認をもらえるよう手配します。各部署との調整や予算の確保などで時間と労力を要する場面もあり苦慮しますが、承認を得るまでの過程は、とても大切な工程です。
その後、工事に必要な資材の手配や人員の調整といった準備作業に取り掛かります。特に設備の更新や交換工事では、専門の施工業者との細やかな打ち合わせや調整が欠かせません。
設備の更新や交換等よる施工業者との協議や調整
設備の更新や交換といった大掛かりな工事は、専門知識や技術が必要となるため、外部の施工業者に依頼します。スムーズな工事進行のため、以下のような段階を経て施工業者との協議や調整を進めていきます。
- STEP1専門業者の選定
工事内容に適した専門業者を選び出すことから始まります。複数の業者から情報を収集し、実績や得意分野などを比較検討します。
- STEP2工事概要の説明と見積もり依頼
選定した施工業者に対し、工事の目的、範囲、スケジュールなどの概要を詳細に説明します。その上で、工事費用の見積もりを依頼します。
- STEP3設計・積算
施工業者が、提示された概要に基づき、具体的な設計図面や必要な資材の数量などを算出する積算作業を行います。
- STEP4図面・仕様書と見積書の提出
施工業者から、完成した図面や仕様書とともに、詳細な費用見積書が提出されます。
- STEP5調整・交渉
提出された図面、仕様書、見積書の内容を精査し、不明な点や修正が必要な箇所があれば、施工業者と協議し、調整や交渉を行います。
- STEP6社内申請と承認
最終的な見積もり金額が確定した後、社内規定に沿って工事の発注申請を行い、承認を得ます。
- STEP7発注・契約
社内承認後、施工業者へ正式に発注を行い、契約を締結します。
- STEP8打ち合わせと段取り
工事を円滑に進めるため、施工業者と綿密な打ち合わせを重ね、作業手順やスケジュール、安全対策などを具体的に決定します。この準備段階での連携不足は、計画の遅延に繋がるため、細心の注意が必要です。
- STEP9工事の立ち会い
いよいよ工事が開始されます。工事期間中は、計画通りに作業が進んでいるか、安全管理は徹底されているかなどを確認するため、現場に立ち会います。
工事の立ち合い
設備の更新や交換工事では、多くの作業員が現場に入り、安全を確保しながら作業を進めます。全停電や部分停電を伴う場合もあるため、安全管理は極めて重要です。工事作業員と工場従業員双方への安全教育を徹底し、計画通りに工事が進行するよう努めます。
立ち会い中の主な役割と業務
工事は基本的に施工業者が管理しますが、私は電気保全担当として、以下の役割を担い、円滑な工事進行を支援します。
- ・安全確保の徹底: 工事中の危険箇所を特定し、適切な安全対策が取られているかを確認します。工事作業員だけでなく、工場内で働く従業員の安全も確保できるよう、常に目を配ります。
- ・工場内での問題対応: 工事中に発生する工場施設や既存設備に関する問題に対し、速やかに状況を把握し、解決策を検討します。
- ・施工業者との協議・調整: 工事中に予期せぬ問題が発生したり、設計変更が必要になったりした場合、施工業者と密に協議し、最適な解決策を見つけ出し、調整を行います。工事の進捗状況や品質が当初の計画や基準を満たしているか、定期的に確認することも大切な業務です。
- ・他部署との連携: 工事による影響を最小限に抑えるため、生産部門や関係部署と連携し、停電時間や作業範囲などを調整します。
最終確認と引き渡し
工事が完了すると、使用前検査として設置された設備の動作確認と安全確認のための試運転を行います。ここで問題がないことを確認できれば、施工業者からの引き渡しを受けます。
※ここでは簡単な流れしか紹介できなかったため、設備の更新や交換については改めて別記事で詳しく説明しますね。
ここまでの説明で、電気保全担当者の一連の業務をご理解いただけたかと思います。次はいよいよ、具体的な「電気保全者の1日」について詳しく見ていきましょう。
電気保全者の1日

電気保全担当者の1日は、日によって内容が変わることもありますが、ここでは典型的な1日の流れをご紹介しましょう。
【とある1日のスケジュール】
時間 | 業務内容 | 詳細 |
---|---|---|
8:00 | 出勤・朝礼 | チームメンバーと情報共有。前日の設備状況や今日の作業予定を確認します。 |
8:10 | 設備の稼働準備・起動開始 | 生産に向けて、設備を稼働させていきます。 |
9:00 | 設備の稼働確認完了 | 全ての設備が正常に稼働していることを確認し、問題がないか点検します。 |
9:10 | メール確認・返信 | 夜間や早朝に届いた緊急連絡や、各部署からの問い合わせメールなどをチェックし、対応します。 |
9:30 | 打ち合わせ | 日によって内容は様々です。社内の製造部門や生産管理部門との設備トラブル報告や改善策の協議もあれば、社外の施工業者やメーカー担当者との工事計画、新技術導入に関する面談も行います。状況報告から今後の計画まで、多岐にわたるテーマで話し合いを進めます。 |
10:00 | 設備の巡回点検・保全 | 各生産ラインを巡回し、異音や異臭、異常な温度上昇がないかなど、五感を使いながら設備の健康状態をチェックします。必要に応じて簡単なメンテナンス作業も実施します。 |
12:00 | 昼食休憩 | 午後の業務に備え、リフレッシュする時間です。 |
13:00 | デスクワーク | 午前中に発生した問題や、収集した情報を整理し、報告書作成や修理部品の手配、工事計画の立案といった事務作業を進めます。 |
15:00 | 明日の作業確認 | 明日以降の作業計画を具体的に検討します。今後の打ち合わせ内容や、緊急度・重要度に基づいて業務の優先順位を決定し、作業プランを立てます。 |
16:00 | 設備の停止作業 | 生産終了に伴い、設備の安全な停止作業を行います。翌日の稼働に影響が出ないよう簡単なメンテナンスや点検・清掃をします。 |
16:50 | 設備停止完了確認 | 全ての設備が安全に停止したことを最終確認します。 |
17:00 | 退社 | 業務終了です。日報を提出し、翌日の引き継ぎ事項があれば共有します。 |
午前中の現場作業と折衝・連絡業務は、電気保全担当者にとって特に重要です。
現場では、他の作業員から設備に関する相談を受けたり、予期せぬ故障個所を発見したり、トラブルの緊急対応に追われる場面も少なくありません。午前中にこれらの問題や課題をできる限り抽出し、解決の糸口を探すことを心がけています。社内外との折衝においても、こちらからの要望を伝え、必要な情報を収集します。
午後からはその内容を整理し、緊急度と重要度に分類することで、翌日以降の業務プランを効率的に進めれるように努めます。
電気保全担当者の勤務時間や休日、残業については、会社や時期によって状況が大きく異なります。詳細な働き方のリアルについては、いずれ記事にしたいと思っています。お楽しみに!
まとめ
この記事では実際に私が担当している仕事内容や電気保全担当者の1日のスケジュールを詳しく紹介してきました。
中小企業で働くリアルな電気保全担当者の仕事内容が少しは伝えられたのではないかと思います。電気保全の働き方に興味がある方が、電気保全担当として就職したときに少しでも納得して働けるようになれれば幸いです。